動動美術工房

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動動美術工房はブロンズ、石膏、FRP等の素材を用いたオーダーメイド、もしくはその修復を専門とする工房です。制作する対象は彫刻、装飾品から実用品に至るまで、様々なご要望に応えていきたいと思っています。
完全受注生産で単品もしくは少量制作が主となりますので、既製品のものと比べると割高になるのは否めません。
であるからこそ、お客様により深く、こだわりを持って制作の依頼をしていただきたいと考えております。
又、納期や値段についても十分に納得をしていただいた後の、発注になる事を願っております。
この為、余談になるかもしれませんが、素材や製作工程などについて、簡単に示してあります。私見も混じっていますので、参考になるか分かりませんが、出来るだけ分かり易く書いたつもりです。何かしら理解を深めていただけたら、と思うしだいです。

素材について

当工房で扱っている主な素材を紹介します。いずれも彫刻や造形の分野ではメジャーな素材で、それだけにさまざまな形に対応できると考えています。
ブロンズとは
ブロンズとは、どんなものでしょうか?銅のことでしょうか?確かにオリンピックなんかで、銅メダルのことをブロンズメダルと言ったりしていますが・・・。辞書などで引くと、青銅と当てられていることが多いようです。砲金(ほうきん)とも呼ばれます。(昔、大砲を作る材料になっていたからです)昔は、唐金(からがね)と呼ばれていた事もあります。青銅と訳されたのは割と新しく、緑青(ろくしょう=表面にできる錆)の色からその名前が付いたとか、(諸説あるようです)いわれています。
基本的に銅と錫(すず)の合金ということで、いいようです。
ちなみに、合金とは、2種類以上の金属を合わせたもので、そのことにより様々な特性を引き出したもののことです。鉄なども正確に言えば鉄と炭素の合金でその割合によって呼び名が変わります。私たちが通常鉄と呼んでいる物は、鋳鉄以外はほぼ鋼にあたります。
このように、通俗的に呼ばれている呼び方と、専門的に呼ばれる呼び方で多少ずれているのが現状のようです。専門的に呼ぶ場合も、工業的な物と化学的な物では違ってきます。こう考えてくると、なかなかこれと定義するのはむずかしく、あえて曖昧に表現してみました。
青銅の場合でも銅と錫だけの合金ということはほとんどなく、他にも亜鉛や鉛等の添加物、多少の不純物が入っています。(もちろん、他の配合もあります)この分類に付いては、JISで細かく分けられたものがあります。興味のある方は、覗いてみるとその多さに驚かれるのではないでしょうか。日頃なんとなく呼んでいたものが、材料の段階で、細かく分けられ用途別に適材適所に使われている、ということです。
また、金属工芸の分野では、この分野ならではの金属の配合があります。合金には、いろいろなやり方があるんだな、と思っていただだけたらいいと思います。
ブロンズの場合は、広義に銅合金を指し、主に青銅を指す。と考えていいと思います。実際、英語のbronzeでは、細かく呼ぶ場合はtin-bronze(錫青銅)などと言う風に呼び分けたりしているようです。 ここで、ブロンズと銘打ったのは、皆さんが、イメージし易いのではないかと考えたからです。なんだか、余計にややこしくしたかもしれません。
ギャラリーを覗いて頂ければ、ブロンズ製品の写真を紹介しております。 ブロンズという素材の面白さが、多少なりとも伝われば幸いです。

ブロンズ--そのメリットとデメリット
ブロンズ製品のメリットはその耐久性と素材の美しさにあると思います。古代ローマの彫刻から銅鐸や銅鏡、仏像や梵鐘などなど世紀を超えて現存しているブロンズ製のものは、枚挙に暇がありません。耐久性については折り紙つきと言っていいでしょう。
その素地の茶色や緑青をまとった姿も貫禄があってすばらしいですし、鏡面仕上げにすると、貴金属と見紛うくらいの光沢を見せます。文字通り鏡として使われていた時代があるくらいですからね。(現在の鏡とは用途が違うと思いますが・・。)
当工房では、このブロンズ本来の美しい表情を大切にしたいと思っています。この為、着色はブロンズに化学反応を促進させる薬品を湿布して、素材そのものから色味を引き出す、といったことを行っています。
これは、完全に同じ色のものは二つと出来ないことを意味します。もちろん、ペアになったものや表情をそろえたい場合は、同じような色調で仕上げることは可能です。厳密に瓜二つという訳ではないですが、これは既製品にはない個性だと、メリットとして捉えています。
 デメリットとして見ると、化学反応によって着色できるということは、化学反応を起こしやすい素材といえます。何が言いたいのかと申しますと、使い方を誤れば、変色することがあるということです。例えば、掃除用品にも酸性、アルカリ性のものがたくさんあります。汚れたからといって、このような製品でブロンズを拭いたり磨いたりすると色が変わる恐れがあります。特に、強酸性のものは(たいていラベルに、混ぜるな危険の文字とともに明記されています)有毒のガスが発生する場合がありますので絶対に触れさせないでください。現在、屋外に置かれたブロンズ像は酸性雨の影響を受けて変色していると言われています。
これは金属製品全体に対して、いえることです。 緑青が、有毒であるという説があるようですが、これは否定されているようです。しかし、着色の際に劇物指定された薬品を使用する場合があります。薬品がそのまま残るといったことはありませんが、口にする場合があるもの(例えば食器等)は、制作しないようにしています。
次に、高価であるということ。単品もしくは少量生産で様々な工程や資材を経て完成するため、なかなか大量生産の製品のように提供できない部分はあります。できるだけ価格をおさえるように、鋳造工程だけ外注する場合もありますが、やはりリーズナブルな価格にはならないのが現状です。依頼した方にそれだけの価値は有る、と思っていただけるように精進したいと思っています。
また、重い、というのもデメリットになるかもしれません。花器くらいですと重量があって貫禄がある、といった具合になるかもしれませんが、大きなものになると持ち運びしやすいとは、お世辞にも言えません。銅像のように固定しておくものなら差し支えありません。
(ちなみに、花器に銅器を使用すると花が長持ちして、中の水にもボウフラが湧かないそうです。理由はわかりませんが・・)

石膏とは
石膏とは?辞書で見ると、含水硫酸カルシウムから成る鉱物。単斜晶形、柱状または卓上の結晶、または塊状、粉状をなす。無色または白色透明のものが多く、層をなして堆積岩や黒鉱鉱床に産する。漢方生薬として、解熱剤、止瀉剤。白色顔料とし、またV焼(かしよう)した焼石膏を陶磁器製造用原型とする。白墨、セメントの製造原料、また彫刻材料。ギプス。と、あります。
いやはや、かえって何のことか分かりません。漢方の方はよく知りませんが、確かに身の回りには、たくさんあります。建築資材として内装に用いられる石膏ボードは、その耐火性を生かして壁や天井にたくさん使われていますし、コンクリートの中にもたくさん入っているそうです。また、石膏型の吸水性を生かして、磁器等の型取りの資材として使われています。その可塑性を生かしたのがギプスですが、最近は骨折したからといって、ごっつい石膏ギプスなどしているのは見かけません・・。ちなみに、ギプスはドイツ語で石膏を意味するそうです。英語で言うとプラスター、石膏ボードのことをプラスターボードと言ったりします。
さて、学校で先生が使っているチョークも石膏ですし、美術室には石膏像と呼ばれる白い像が置いてありました。
この石膏像が当工房の仕事分野になります。石膏像そのものも作りますし、着色をしたりします。この色をつけた石膏像は教会などに行くと、キリスト像やマリア像といった御像として置かれています。これらの修復等もいくつか手掛けました。
当工房が、通常使用する石膏は、辞書で見たややこしい鉱物に熱を加えて半水化した焼石膏というものです。これは、水を適量加えると徐々に硬くなり、完全に水分が抜けると、カチカチになります。この、ドロッとした状態で型を取ったり、固まった状態を切ったり削ったりして、様々な形を作っていきます。彫刻、造形の分野では、非常に馴染みのある素材です。
また、鋳型(いがた、後述)の形成にも使用します。(これは、石膏鋳型という特殊な用途になります)
一般的にはあまり馴染みのない素材ですが、石膏そのものの質感は柔らか味のある、色味は白色で落ち着いたものです。漆喰の壁を、イメージしていただければよいかと思います。

石膏--そのメリットとデメリット
メリットとして加工がしやすい、他に挙げた素材と比べると安価である、といえると思います。
加工しやすいことは、いろいろな形に柔軟に対応できるといえます。それに、一次もしくは二次素材ですので、作業工程も少なく(下記作業工程を参照ください)作業時間を減らすことができるといえます。
これは、値段に反映され、他に挙げた素材より安く制作することができます。
ただし、着色するものは、ものによっては非常に手間のかかる作業になります。着色されたものの修復となれば、なおさらです。(例えば、キリスト像などの聖像修復等。何度か手がけましたがかなり手間のかかる作業となりました)
デメリットは、他に挙げた素材と比べると耐久性という点で、見劣りしますね。屋内に保存するのであれば、さほど気にすることはないでしょうが、水気のある場所、特に屋外は雨が降るので、設置出来ません(激しく劣化します)。
また、ぶつけたり落としたりすると破損します。保存状態に気を使えば別に腐ったりする素材ではないので、長持ちします。
FRPとは
FRPとは?またまた辞書を引いてみますと、繊維強化プラスチック(Fiber=繊維、Reinforced=強化された、Plastics=合成樹脂)。ガラス繊維炭素繊維などをプラスチック中に分散させて強化、軽量化した材料。とあります。これは、分かり易いですね。
軽くて強いという特徴を生かして、自動車や船のボディ部分に使われていたりします。
彫刻、造形の分野でも非常にポピュラーな素材で、FRPで制作された像をブロンズ色調にして、美術展に出品されているのを見かけます。私は無理にブロンズ色調にする必要は無いように思いますが・・。
それはさておき、店先の人形や造形的な看板、公園や遊園地のユニークな動物たちやキャラクターなどのほうが、よく見かけますね。こちらも、FRPで作られたものが多いです。
さて、素材の話なので、分かる範囲で少し。
まず、Fiber=繊維ですが、これは一般的にはガラスを細く繊維状に引き伸ばしたものを使います。それを、マット状にしたり、布状に織り上げたものを貼り付けるようにして補強材とします。
他にも、炭素繊維(カーボン)などがありますが、非常に高価で、素材としての現物は見たこともありません。レーシングカーのボディなどに、かっこよく使われていたりしますね。
次に、Plastics=合成樹脂ですが、合成樹脂とありますが天然樹脂由来のものもプラスッチックと呼ぶので、かなり幅広いものの総称という感じですが、高分子のものを全体的にさすのかな(ポリ〜とかよく名前についてるし・・)。合成樹脂という訳は時代的にもう古いのではないかという気がします。というのも、天然素材由来の分解されやすいものが、もてはやされているからです。あまりに多くの用途と形状があるので、その全体像は専門書を覗いてもらうとして、自分なりの感想を述べるにとどめます。
プラスッチックは近代に台頭し、その語源ともなった可塑性(成型のし易さ)を生かし、衣食住すべてにおいて私たちの生活環境を劇的に変えた素材といっていいと思います。
例えば、以前、卵はかご等にわらを敷き詰めてその上に置かれて売られていたのだそうです。その後、卵パックが開発され仕分け梱包が量産できるようなると、流通、販売に至るまでそのスタイルが大きく変化しました。科学的に安定しているため容器としても非常に優れた素材で、PETボトルはじめ食品トレーからポリ缶までありとあらゆるところで見かけます。衣料品では合成繊維やアクセサリーが、バッグや履物では合皮が生活をカラフルにし、住居においてはクロス、家具、家電等いたるところで使われています。周りを見渡すとどれだか多くの恩恵に与っているか分かると思います。
もちろんプラスチックという素材だけで暮らしが変わったわけではありませんが、私たちの生活をまさに劇的に変えた一因になった素材なのは間違いないでしょう。
しかし、大量生産によって安価に提供されるようになると、安かろう悪かろうといった安易な価値観によって、また、科学的に安定していることが逆に災いとなりエコロジー等の時代に逆行しているとして、その恩恵に感謝されることが少ないように思われます。 受注生産で、高価な製品を提供している私が言うことではないのかもしれませんが、100円ショップ等で販売されている製品にも多くの人の知恵と努力が詰まっているのは言うまでもありません。よって、当工房でつくられたものが100円ショップ等のものより優れていると申し上げるつもりもさらさらありません。ただそういった量産品にできない部分を何らかのかたちで提供できればと思うだけです。
なんだか話がずいぶんと横に反れました。えー最後に特徴的なのは複合素材である、ということです。先に紹介したブロンズ(合金)は、複数の金属を合わせることで新たな特性を引き出しますが、複合素材とは、互いの長所を生かしたまま互いの欠点を補い合うものです。よく複合素材として鉄筋コンクリートが引き合いに出されますが、ちょうど同じような感じで可塑性の高いプラスチックをガラス繊維等で補強して形成していきます。ここに(Reinforced=強化された)がかかってきます。もともとは、アメリカが、戦時中に開発し投入した技術だそうです(本当かどうかは分かりませんが、こういう非常時に眼の色変えて技術開発が進むことがあるのは、皮肉にも歴史が裏付けているようです)

FRP--そのメリットとデメリット
まずメリットとしては、自動車や船などのボディに使用されるぐらいですから、その強度は十分にあると思います。(ただし、激しくぶつけたりすると割れる場合もあると思います。)しかも軽いので、持ち運びするものに使用するのにも適しています。
デメリットとしては、合成樹脂塗料等で着色して使用される(素地が紫外線に影響を受けるためではないか、と思っています)のが一般的なため、年月が経って、所々表面の塗装がはがれた場合、あまり美しくありません。再塗装を施すか、何らかの修復作業が必要になると思われます。塗装せずに、透明の樹脂を使ってその下地や骨材の素地を生かすという方法もあります。それでも、年月が経って劣化してくると思います。特に屋外に設置する場合は、気をつけたほうがいいと思います。
また、熱に対して弱く、もし燃えた場合は有害な煙が出ると思います。もちろん、燃やすものではありませんが、火の気の近くに置くのはよくないです。

技術について

技術についてとは少し大げさな言い方ですが、一般的にあまり馴染みのないと思われる事柄について少し話したいと思います。

型取りについて
模りと書いてもいいのかもしれませんが、型を取る、文字通りの意味で説明する必要も無いのかもしれません。ですが、私がそうだった様に意外に良く分かっていないものなのでは?と思い、少し紐解いてみます。
突然ですが、皿の上にポトンと落とせるプリンがありますよね。これが、基本的な型取りの原理です。
この時プリンが入っていたケースのことを雌型(めがた)と呼び、プリンのほうを雄型(おがた)と呼びます。
通常、雄型のほうは原型、模型などと呼ばれることが多く、型取りというと雌型を作ることを指します。ちなみに、プリンを落とす行為を型抜きと呼びます。
きれいにプリンが取れるのは何故か。これは、プリンが取れる方向に形がひらいているからです。逆に口がすぼまった形のケースでは、プリンはうまく落ちてきませんよね。
この取れる方向に向かってひらいている角度のことを、抜け勾配と呼び、型取りをするうえで重要なポイントになります。
今度は鯛焼きをイメージしてください。もうお分かりでしょう、これは上下2個の雌型で形成された雄型ということになります。全体を型で包まれているので、より複雑な造形になっているのが分かると思います。
この2個(もしくはそれ以上)の雌型で形成するものを割り型と呼び、型取りを考える場合は通常こちらのほうを指します。
鯛焼きをひとつずつ鯛の形に手作りしていては大変ですが、雌型を作ってしまうと、複雑な形であっても同じ形のものが何度でもたくさん出来ます。これが、型取りの真骨頂でしょう。
そして、型取りの手法は現代の大量生産にに非常にマッチしました。
ネガティブな形からポジティブな形を写し取る(便宜上ネガ、ポジと書きましたが要するに目的の形の裏返った形状を用いて目的の形をつくる、ということですね。)これだけのことですが、形作る相手にプラスチックという素材を得て用途が様々な分野に広がり、量産によって安価に提供できるようになると、瞬く間に身の回りに広がりました。
もちろん以前から身の回りに無かったというわけではありません。例えば枝銭と呼ばれた硬貨は鋳造品ですし、木型を使った型菓子、カマボコなどの食品、鋳型を用いた磁器、張り子のように紙を用いた面や人形などわりと古くから(江戸時代くらいかな)あるのもたくさんあると思います。
しかし、現在のように大量に見かけるといったわけではなかったと思います。これには型取りしてものをつくるということが単品もしくは少量生産にはあまり向かない技法だということがいえると思います。そうなんです、単品、少数の生産を行っている当工房は非常に非効率といわざるを得ません。そこに意義を見出すかはこのページを読んでいる方々におまかせするとして、鋳型を壊さなければ製品が取り出せない砂型や石膏鋳型とは異なり、金属製の雌型を使ったダイカストなどが考案されていったといえると思います。この金属製の雌型は金型と呼ばれ現在の大量生産は金型無しには成り立たないでしょう。今ではコンピューター(3DCAD等のソフトウェアー)と職人の手によって非常に精密なものも作れるようになっています。(子供の頃に作ったプラモデルのロボットと今発売されている物とのギャップに驚かされます。すごいですよね)
なんだか、当工房の仕事をマイナスな感じに紹介したみたいですが、そうではありません。量産に向いた金型を使う製法は、ひとつの製品のコストを下げることができる代わりに、ある程度の量を販売しなければ元が取れません。金型自体も高価なものですし 単品もしくは少量生産では元が取れません。また、鋳造品でみるとダイカストのような方法は大きな製品を作るのには向きません。オーダーメイドには向かない手法といえます。それぞれ向き不向きがあるということだと思います。
わざわざ取り上げたのは、この原理が分かると身の回りのものがどうやって出来ているのか想像がついてなんだか楽しいと思うからです。

鋳造について
鋳造という言葉、耳慣れないという方もいらっしゃるでしょう。鋳造によって作られたものを鋳物(いもの)と呼びます。
『水は方円の器に従う』
ずばり、これが鋳造の真骨頂といえます。諺としての意味はさておき、言葉通りの意味です。水、つまり液体の状態のものを器に注ぎ、その器の形に沿った状態で固めてしまう(固体にしてしまう)というわけです。この形を写し取るための器を鋳型(いがた)と呼びます。
ここでまた、プリンに登場してもらいましょう。プリンの材料をケースに流し込んで固めると、ケースの形に沿ったプリンが出来ます。このプリンのケースには蓋がありません。全体を、ケース(雌型)で覆われているわけではなく、片側が開いた状態になっているので、これを開放鋳型と呼び、もっとも初期の鋳物はこのような手法をとっていました。
これが、タイヤキ君のように全体を割り型で作るようになると複雑な造形が可能になってきます。さらにあんこの部分を中子(なかご)と呼ばれる特殊な雌型に置き換えると、中が空っぽの鯛焼き、もとい製品が出来ます。
他にも様々な工夫を加えて、複雑な造形を一度に作ることが出来ます。
この複雑な造形をいっぺんに形成するというのが、鋳造の素晴らしいところで、他の手法ではなかなかこうはいきません。
ところで、お気づきでしょうが、鋳型も雌型の一種だといえます。
しかし、鋳型には様々な条件が求められます。金属を溶かして液状にして流し込む(鋳込む、いこむ、といいます)ため、その融点となる温度(当工房のブロンズ鋳造の場合1200℃近くまでなります)と、鋳込む時の圧力に耐え得る素材でなくてはならず、そのとき金属からガスが発生するのでこれを効率的に排出することも求められます。
また、鋳型は、金型(金属で作った鋳型。主に融点の低い金属に対して使われる)や、特殊な鋳型を除くと、鋳造してしまうと中身を取り出すのに壊してしまいます。当工房の場合も同様で、鋳型はそのたびに製作します。
これは、温度や圧力に耐えつつ、ガスを抜き、かつその後は壊し易いものが求められます。
ただの雌型より、ハードルが上がっているのがお分かりでしょう。
鋳造に話を戻しますと、鋳造はもともと金属を溶かして(鋳の文字に金偏がついてますね)作るものでしたが、現在は鋳型に流し込んで形作るもの全体を鋳物と呼んだりしているようです。形作る素材は様々でしょうが、液体と固体の状態を上手に利用して複雑な造形を可能にする点では同じでしょう。
話を広げればいくらでも広がるのでしょうが、私にはそれほどの見識はありませんので、この辺で・・。鋳造については何となくイメージして頂けたのではないか、と思います。
最後に、当工房で行っているロストワックス法(蝋型鋳造法)は、もともと西洋で彫刻ブロンズ像を制作するために使われてきた技法で 、イタリアからの技法を基にやっているので、このように呼んでいます。(ロストワックス法は他にもあるので、区別するためにイタリアロストワックス法と言ったりします)鋳造という技術は多岐にわたり、それぞれ用途に応じて優れたものがあります。これは、美術工芸を主体とした鋳造法の一例であるということを、申し上げておきます。

制作工程について

ロストワックス法(蝋型鋳造法)を中心に作業の流れを簡単に紹介します。
というのも、他の素材の場合も途中まで同様の工程をとるからです。補足説明を加える形で、他の素材についての工程は割愛させていただきます。

打ち合わせ
当工房は、完全受注生産です。このため、お客様のご依頼があって初めて作業がスタートします。
まずどういう物を作りたいか、デザイン、大きさ、値段、設置場所、納期など、いろいろな事をお客様に伺った後、こちらから見積もりが提示されます。(見積りは無料ですので気軽に御問い合わせください)
見積もりにご納得いただいた場合、作業開始です。
また、予算が決まっている場合、その予算内でどのようなものが制作可能なのかこちらから提示することも可能です。
鋳造依頼の場合、作品の写真をメールにて(FAXでは分かりづらい場合があります)送ってください。(このとき大きさを記入するのをお忘れなく)追ってこちらから見積もりと納期が提示されます。
いきなり現物を送ってこないでください。こちらに破損して届けられた場合は、保障しかねます。見積もり等にご納得いただけなかった場合、申し訳ありませんが返品の送料はご負担いただくことになります。
デザイン
具体的なデザインがある場合、また鋳造依頼の様にすでに作品がある場合は、この工程はありません。(多少の修正を行う必要がある場合は話し合います)
具体的になっていない場合はデザインの目的、雰囲気、方向性を伝えていただければ、こちらからデザインの提示をおこなうこともあります。資料をいただいたり、デザイン案を提示したりしながら、具体的に練り上げていきます。ラフスケッチから始まって、最終的には寸法をもたせた仕上がりのデザインにしていきます。必要とあれば、CG画像を用意したりします。(例・プレゼンテーション用等)
当工房で制作した多くのものが、この工程を踏んでいます。私自身も、お客様とイメージを練り上げていくのは楽しいですし、やりがいも感じます。双方、納得がいくまで十分に検討すべきところだと考えています。

原型制作
イメージを基に原型となるモデルを製作していきます。通常、彫刻などは油土を使って作ることが多いですが、その他の材料で作ることもあります。(原型をつくる素材は型取りできる物であれば、何でも構いません。実際、目的に応じていろいろなものを使います。木材、石材などで原型をつくって型取りした場合その素材のテクスチュアがでて味わい深いものになったりします。)
粘土油土等の柔らかい素材で作った場合、石膏で雌型をとり、その雌型で石膏雄型(石膏原型)をつくります。
後で形を作り変えることは、ほとんどしないので、この段階でしっかりと作り込み、納得いただけるような形にします。大きなものは雛型を作ることもあります。

雌型取り
出来上がった原型から雌型をとっていきます。形に応じて石膏やシリコンを使い分けてとります。シリコン雌型の場合は精密な描写の再現が可能です。複雑な形や、大きなものは、分割して雌型をとります。
鋳造もしくはFRP制作の依頼の場合、原型がある為この工程からのスタートになります。
蝋型取り
雌型が取れたら、雄型から外してその上に蝋を付けていきます。蝋には、ある程度の厚みを付け、この部分がのちにブロンズに置き換えられます。雌型を取ると、蝋によってポジティブに写し取られます。すなわち原型と同じ形になります。これを、蝋型と呼びます。
ここで雌型に樹脂を張り込んでガラス繊維で補強すればFRPによる造形になります。この後修正を施して着色の工程に進みます。
鋳型製作
この後、蝋型に金属の通る道などをつけ、その周りを、耐火物で覆っていきます。これが、鋳型になります。ある程度厚みや強度をつけて鋳型を完成させます。鋳型が一体形成の為、複雑な形も、制約のない再現が可能です。

焼成
しばらく鋳型を乾燥させたら、次にこれを釜で焼いていきます。小さい物は2、3日くらい、大きい物は6、7日かかるものもあります。この時に、先に蝋で作った部分が、溶けて空洞になります。

鋳造
この空洞の部分に、溶かしたブロンズを流し込みます。この、溶かした物を流し込んで形成する事を、鋳造と呼びます。

仕上げ
鋳型を壊して、ブロンズ部分を取り出します。余分なもの(湯道ガス抜き等)を取り去って、修正をします。大きな物は、別個に作られたものを、つなぎ合せます。

着色
修正されたブロンズをイメージに合わせて着色します。主に化学変化によって着色するので、年月を追うごとにゆっくりと味のある変化が楽しめます。小品は、この時点で完成となり、発送されます。
大きいものや屋外に設置するものは、この上から塗料による塗装を施す場合があります。
FRP作品の場合は塗料による着色のみになります。
施工
大きな物は、台座などを別途に制作し、据え付けます。基本的に、私どもの工房では納品までなので、台座への取り付け工事などは行いませんが、出来るだけ立ち会います。

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